アップルのザンダー・ゾーレン氏に特別取材を敢行!
最新「Logic Studio」の気になるバージョンアップ・ポイントとは!?


LogicStudio_Interview.jpg我々ミュージック・マスター取材陣は、最新Logic Studioの国内発売が間近に迫った8月14日、アップルのザンダー・ゾーレン氏(Music Creation Application 担当ディレクター)に直撃インタビューを行うことに成功した。ここでは、ザンダー・ゾーレン氏とのやりとりをインタビュー形式でお届けすることにしよう。

MM:今回のLogic Studioは一言でいうと、どんなバージョンアップなのでしょうか?

ゾーレン:それは大きく分けて3つあります。1つめは「ギタープレイヤー」、2つめは「制作ツール」、そして3つめは「ライブパフォーマンス」です。Logic Studio自体、実は今回200を超えるバージョンアップ箇所があるため、とても一言では言い尽くせないのですが、まずはこの3つと言えるでしょう。

MM:それでは、「ギタープレイヤー」という点から詳しく教えてください。
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LogicStudio_New0_amp.jpgゾーレン:新しいLogic Studioでは、ギタリストのための「アンプ」、「ペダルボード」、「ギター譜」、インターフェイスとしてアポジー「GIO(ジオ)」への対応が挙げられます。「アンプ」に関しては、25種類のアンプタイプ、25種類のキャビネット(スピーカー)、5種類のEQ、10種類のリバーブ、3種類のマイクを利用でき、ビートルズのようなサウンドからハードなメタル、もちろんジャズ系のサウンドも表現できます。また、昔レッドツェッペリンなども使用したというチープなアンプ(デパートなどで安価に売られていた青色のアンプのこと)も収録しています。また、ペダルボード(いわゆるコンパクトエフェクター)も30種類搭載していて、画面上でドラッグ&ドロップするだけで簡単に接続の順番も前後させることができます。

MM:アンプ、キャビネット、ペダルボードともにグラフィックが非常に凝ってますよね。

ゾーレン:そうです。開発チームも相当こだわってデザインしましたからね。

MM:その他、アポジー「GIO(ジオ)」についても教えてください。

ゾーレン:ギタリストがLogic Pro 9やMainStage 2を使う際に、この「GIO」はとっても便利です。「GIO」はUSBタイプのオーディオインターフェイスで、もちろんギターを直接つなぐことができますし、足下で「ペダルボード」の切り換えや、楽曲の再生、録音、早送り、巻き戻しといった操作も行うことが可能です。各「ペダルボード」には、レッドやブルー、オレンジといった目印があるのですが、それらも「GIO」と連動して視覚的に判断することができます。

MM:続いて、「制作ツール」としてのバージョンアップポイントを教えてください。

ゾーレン:制作ツールとしては、「Flex Time」、「Drum Replacer」、「Convert to sampler」、「Expanded Take Editing」、「Selective Track Import」という5つのポイントがあります。まず、「Flex Time」ですが、これはツールメニューの「Flexツール」を使うことで、レコーディングした波形のタイミングを自由に調整できるものです。波形をドラッグしながら、視覚的に各パートの発音場所が変えられるので、ギターやドラム、ボーカルなど、ヨレた部分も簡単に修正可能です。また、この「Flex Time」は非破壊編集ですので、エディットを何度でも試すことができます。なお、各パートのチャンネルストリップには、編集前と後を比べる機能も装備していますので、こちらを活用すると大変便利だと思います。

MM:「Flex Time」は、具体的にどのような手順で使用するのですか?
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LogicStudio_New1_FlexTime.jpgゾーレン:「Flex Time」を使う場合、まず始めに各トラックに応じて「モノフォニック」、または「ポリフォニック」といったモードを指定します。後は、「Flexツール」で希望の波形箇所をドラッグするだけなのですが、Logic Pro 9の場合、元の波形の位置では「グレー表示」、圧縮された箇所は「緑」、伸張した部分は「オレンジ」といった具合にグラフィカルに波形が再表示されるのが特徴です。ちなみに、この「Flex Time」はLogic Studio 9で録音したものはもちろん、他のDAWソフトで録音したオーディオファイルにも設定することが可能です。

MM:なるほど、これは強力な機能ですね?

ゾーレン:「Flex Time」は、ただ単純に波形のタイミングを修正するだけではなく、演奏のノリを解析するためのツールとしても応用できるんです。例えば、バスドラムのトラック全体を選択し、グルーブテンプレートを作成しメニューに追加、これをベースに反映させれば、簡単にバスドラムのノリにベースを合わせることもできるわけです。つまり、クオンタイズとしての使い方もできるんです。

MM:続いて、「Drum Replacer」についても教えてください。
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ゾーレン:「Drum Replacer」は、一言でいえば、録音したドラムの中で、ある特定のパーツを別の音色に差し替えるための機能です。例えば、録音したドラム演奏の中で、スネアの音だけが気に入らない場合、ドラム全体の波形を「ドラムリプレイスメント」で解析すると、付属のソフトサンプラーEXS24が起動し、オーディオデータのタイミングに合わせたMIDIデータがMIDIトラック上に作成されます。後は好きな音色をEXS24上でセレクトすることで、ドラムがバラバラにエディットできるわけです。

MM:「Expanded Take Editing」とはどういったものなのでしょうか?
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LogicStudio_New2_Expand.jpgゾーレン:これは、コンピングと呼ばれる機能を強化したものです。コンピングとは、以前のLogic Pro 8で好評だった「複数テイクの中から、希望のテイクのみをつなぎ合わせて最終テイクを作る」というものですが、バージョン9では、さらにこのコンピング内のテイクを左右に移動したり、編集できるようになりました。

MM:なるほど、それでは「Selective Track Import」とはどんな機能なのですか?

ゾーレン:「Selective Track Import」は、メディアブラウザからオーディオファイルなどを選択する際の機能です。例えば、録音したドラムのデータが気に入らなくて、2日前のファイルに差し替えたい場合、新たなLogic Pro 9では、希望のファイルをエフェクトなどの設定も込みで読み込むことができるようになっています。

MM:では、新たなLogic Studioの「ライブパフォーマンス」という側面について教えてください。

ゾーレン:新しいLogic Studioには、Logic Pro 9の他に「MainStage 2」も収録されています。このアプリケーションは、文字通りライブパフォーマンスに便利なもので、Macをステージに持っていけば、例えばギタリストならアンプ代わりに、キーボーディストなら音源代わりにMacを使用できます。なお、今回の「MainStage 2」には、以前のものと比べ「Play Back」と「Loop Back」というプラグイン(機能)が新装備されています。

MM:それぞれ、どのようなものなのですか?

ゾーレン:「Play Back」機能は、文字通りバックトラックを「MainStage 2」上で再生できる機能です。複数のトラックを読み込むことはできませんが、ギタリストなどから要望の高かったものです。また、「Loop Back」は演奏をその場で録音し、ループ再生させるための機能です。

MM:それでは最後にLogic Studioの発売を待つ日本のユーザーに一言お願いします。

ゾーレン:新たなLogic Studioには、「Logic Pro 9」、「MainStage 2」、「Soundtrack Pro 3」に加え、膨大な素材集。そして、プロの実際の楽曲データがあらかじめ数曲収録されています。この楽曲をチェックすることで、プロエンジニアがどのようにエフェクトをかけ、またエディットを行い、最終的にミックスしているのかを学ぶこともできるはずです。いずれにしても、Logic Studioはこれまでにない強力なミュージック・プロダクション・ツールです。ぜひともLogic Studioを楽しんでください。